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17. Januar 15

【音楽】2つの『女川建準行動歌』~震災後の現代に蘇った労働歌は,「言葉」と「身体」の壁を超えるか

 昨年,2人のミュージシャンによって今まで音源すら存在しなかったある東北の労働歌が復刻された。『女川建準行動歌』である。

 この労働歌『女川建準行動歌』とは,宮城県牡鹿郡女川町に立地する女川発電所の作業員がかつて歌っていたとされる発電所の労働歌で,当時,発電所建設事務所に勤務していた故・江川泰さんという人が作詞をしたものだ。その頃に流行のブルースの節に合わせて作業員らが歌っていたという記録も残るが,実際の音源は存在せず,今までは闇に埋もれていた労働歌である。
 この労働歌の存在に注目し,新たに曲を付けて現代の労働歌として蘇らせたのはIkasama宗教の名でお馴染みの石巻のミュージシャンの阿部正樹と,彼のライヴ仲間である脱法超電磁高橋だ。

 『女川建準行動歌』の復刻にはまずこの様な経緯がある。私が毎年催行している東北の観光ツアー「女川歴史民俗紀行~平井弥之助と貞観・慶長大津波伝承の旅」に同行した名古屋の舞台俳優ニシムラタツヤがまず女川の温泉宿の座敷で朗読による『女川建準行動歌』を上演している。(「女川歴史民俗紀行」とは,千年に一度の大震災に耐え抜いた女川発電所の設計思想を平安時代の津波伝承や古文書まで辿る歴史伝承の旅である。)  この時に同時に朗読された演目は,古文書『日本三代実録』巻十六「貞観大津波」と,高村光太郎『三陸廻り』だ。『日本三代実録』は,そこに記された貞観の大津波伝承が女川発電所の構造上の設計思想に大きく反映されている事でも女川という土地とも関わりが深く,高村光太郎の『三陸廻り』にも光太郎が石巻,女川を旅をした事も記されている。
 これらのものを肉声で朗読するという行為そのものが,そのテクストの骨格に「肉付き」と「神経」と「血流」を与える行為でもあり,ニシムラタツヤの女川での朗読の舞台は,テクストの「場」と「空間」を十分に意識した内容の素晴らしいものであった。
 そして,このニシムラタツヤの朗読に触発されたと言ってもいいのが,阿部正樹と脱法超電磁高橋の2人のミュージシャンである。特に,阿部正樹は自分自身が東日本大震災の被災者でもあり,漁師の父が女川発電所でも仕事をしていたという経歴も持つ。その当事者としてのミュージシャンが,音源が存在しない労働歌『女川建準行動歌』に新たに曲を付けて,現代のブルースとして蘇らせたいと思うのは至極当然な事だ。

 こうして昨年に,まず山形・鶴岡「TRASH」で阿部正樹が初披露。次の仙台「音屋スタジオ+」で競作というかたちで阿部正樹と脱法超電磁高橋の2人のミュージシャンが,それぞれに別のカヴァーとして披露した。
 同じテクストから別のアレンジが生まれるという面白さは,近年では宇多田ヒカルのカヴァーアルバム『宇多田ヒカルのうた-13組の音楽家による13の解釈について-』を聴いてもわかるとおり,優れたテクストは他のクリエイターの創作意欲も刺激し,これが後世にわたって「古典」として残っていくものである。このたびの阿部正樹と脱法超電磁高橋という2人のミュージシャンによる労働歌『女川建準行動歌』にも同様の事がいえる。
 そして両者それぞれに楽曲の解釈も異なる。これは両者の2つの『女川建準行動歌』を聴き比べればわかるだろう。脱法超電磁高橋によるカヴァーでは,弾き語りのブルースとなっている。1日の労働を終えた後に浜辺で歌う様なブルースだ。脱法超電磁高橋はこれを「生活のうた」と呼び,なかなか報われない日々をクレイジーキャッツ風にアレンジしたという。
 一方で,阿部正樹による『女川建準行動歌』は酒場で歌う音頭としてアレンジされている。そして江川泰さんのオリジナルの歌詞の前後には「朝礼」と「終礼」というフレーズが新たに加えられている(http://blog.livedoor.jp/sa2971696-aka/archives/42169558.html)。このフレーズは全ての労働者に敬意と感謝を込める内容となっており,例えば『ヨイトマケ』の様な土木の労働歌の正統派といえるだろう。それでいて,皆で手拍子で歌う様な陽気な「音頭」となっている。実際に,仙台に続き,昨年の暮れに東京・高円寺のライヴハウス「REEF」で披露された時には,会場の客が手拍子で踊りながら聴いていた。

 「ブルース」と「音頭」というかたちで現代に蘇った発電所の労働歌『女川建準行動歌』の歌詞も吟味しながらぜひ聴き比べて欲しい。





『女川建準行動歌』(作詞:江川泰)

ずんだ袋を肩にかけ
今日も出て行くあの浜へ
明日の着工 胸に秘め
おれはただ歩く

石を投げられ塩まかれ
乞食犬より つらい目に
遭えど怯まず たゆみなく 
おれはただ根性

話し合いのひと事が
こんなに重いと誰が知ろ
願い遂げたる そのときは
おれはただ涙

やがて夜空に原子の灯
浜辺に映ゆる その時は
友よこぞって肩を組み
おれはただおどる

栄えあれかし女川の
夢も大きく はらむとき
共存共栄の旗かかげ
おれはまた歩く

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