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13. April 10

【ライブ・パフォーマンス】 詩人・伊藤洋子+ナガッチョ (銀座・ギャラリースペースQ)

 東京・銀座のギャラリースペースQで、詩人で画家の伊藤洋子とパフォーマー・ナガッチョの即興ライブが行われた。このライブは伊藤洋子の個展『私の8つの太陽』のオープニング・イベントとして急遽開催されたものだ。
 伊藤洋子は、1980年代から銀座、新橋、神田界隈の画廊を中心に、肉声によるポエトリー・リーディングを続けてきた詩人である。近年は現代詩の同人活動に加えて、画家としての活動も精力的に行っている。
 画家としての伊藤の作品は詩と同じく、自分の家族や自分自身の身体を題材とした寓話的な作品が多く、マイクロフォンを通さない肉声によるポエトリー・リーディングにこだわるのも、自分の身体から発した「言葉」も肉体の一部であると考える伊藤の表現を裏付けるものである。
 また近年制作されたタブローは、画面から以前のような余白が無くなり、細かい異形細胞のような模様がテクスチャーとして画面を覆っている。
 昨年、池袋の協栄ジムの近くにある伊藤洋子のアトリエを訪ねてインタビューを試みた時、この作風の変化について、昨年患った卵巣腫瘍で片側の卵巣を全摘出した事が発端となっている事を初めて知った。つまりどういう事かと言うと、伊藤が無心になって画面の余白をテクスチャーで塗り込めていく行為は、片側の卵巣を失った事による喪失感を埋めるための代替行為なのである。
 それは、片側の卵巣が無くなった事で,伊藤自身があたかもその場所が未だ空洞であるかのように感じる空間に何かを補填し,質量を卵巣摘出以前と同等に保つ事を表している。そして、伊藤が卵巣腫瘍を患った年齢が、自分の母親が乳癌を患った時と同じ年齢なのである。
 今回、パフォーマーのナガッチョと試みたライブ・パフォーマンスはこの事を念頭において見ると、伊藤洋子自身の非常に複雑な年代記が寓話となって構成されている事が分かるであろう。

 伊藤洋子がナガッチョの即興演奏をバックに朗読しているのは全て伊藤の自作の詩である。これは、若くして自分を残して乳癌でこの世を去った母に対する憎悪、悲哀、様々な感情が複雑に反復する作品である。自分を残して癌で死んだ母を自分の胎内に宿し、その母を自ら産み落とす事で母と再会して、自分が母を失った時の悲しさ、自分を残して死んでいった母に対する恨み、辛みの気持ちを母にぶつける、という寓話的な物語が展開されていく。
 「お母さん、お腹が空いたよ」、「お母さん、痒いよ」と暗がりで悲痛に訴える伊藤洋子の声は、病で床に伏した母が自分の事を十分に構ってくれなかった事に対する残酷な怒りだ。

 ライブで競演したナガッチョは、伊藤洋子と同じく1980年代から銀座、神田界隈の画廊を中心に活動を続けてきたパフォーマーで、笛、ハーモニカ、身近な小型の打楽器をリュックに詰めて、方々の美術作家の個展やグループ展会場を大道芸人のように渡り歩いてきた。その表現スタイルは、まず美術作家の展示作品からインスピレーションを得て、ライブを組み立てていくというものである。インスピレーションが降りてくるまでは相当の時間がかかる事もある。その時の会場の雰囲気、空間によっても内容が自在に変化する。
 この日のライブは告知が遅れたために、ナガッチョのライブを知らずに伊藤洋子の個展会場に来た来場者もたくさんいた。そこでライブを最初から見る機会が無かった者のために、異例ではあるがアンコールで短めのライブも行われた。私が録画で記録したのがこのアンコールのものである。伊藤洋子が肉声でぶつける母への憎悪、悲哀を、音と自らの身体で表現を試みたものである。(伊藤洋子個展『私の8つの太陽』2010年4月12日(月)~17日(土)まで。ギャラリースペースQ・銀座)

■ギャラリースペースQ
http://12534552.at.webry.info/

■伊藤洋子作品レビュー■
【名古屋芸術大学・芸術療法講座】 詩人・伊藤洋子インタビュー(芸術療法演習)
【アート】伊藤洋子個展 『卵巣の雲』(2009年8月31日~9月5日,ギャラリー代々木)

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