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22. März 10

【パラリンピック】 アイススレッジ・ホッケー日本代表、死力を尽くして堂々の銀メダル

 パラリンピックのアイススレッジ・ホッケー決勝が日本時間午前4時に行われた。結果は残念ながら0-2でアメリカに敗れ、金メダルとはならなかった。しかし今回の日本代表の活躍は、2つの画期的な事をもたらした。その一つは、まず準決勝で地元の優勝候補だったカナダを破り、なんと決勝まで駒を進めたことである。これが如何にすごいことなのかは、アイスホッケーというスポーツの根本を考えてみればわかる。
 先日まで行われていたバンクーバー五輪で上位に勝ち上がってきたチームの体格、スピードの中で、果たしていつも日本リーグで戦っているチームが太刀打ちできるだろうか。アイススレッジ・ホッケーは通常のホッケーと同様の過酷さを極めた競技なのである。こんな状況の中で決勝まで駒を進めただけでも歴史的快挙なのだ。
 そしてもう一つ異例だったのは、この快挙を受けて、放送権を持っているNHKは急遽、早朝に生放送を決定した事である。先日のコラムでも、メディアのパラリンピックの扱いがあまりにも貧しい状況に触れたが、これまでNHKは、日本選手がアルペンやノルディック競技で金メダルを獲っても競技の模様を完全放送する事はなく、夜の教育テレビで25分程度のダイジェスト版で競技の結果を伝えただけである。しかも、表彰式の様子も流さない。完全に福祉番組枠で制作されたようなお粗末な放送内容だったのである。
 この事について不満に思っていた視聴者も相当数いたようで、おそらくは多くの要望がNHK側に届いたのであろう。NHKは決勝の3日前に急遽生放送を決定したのである。急に決まった放送であるからネットのテレビ欄では前日まで掲載される事はなかったので、視聴者の多くはTwitterなどの口コミで生放送の件を知ったようだ。
 本来、パラリンピックをスポーツ競技と捉えるならば、最初からこうあるべきなのである。競技の結果だけ伝えられるよりも、やはり実況解説とともに、第一ピリオドから勝負の行方をライブで楽しむ方がよいに決まっている。障害者スポーツが、いわゆる「福祉」の領域から一歩も二歩も世界と戦う場に出ていけば、迎い入れる環境もこのように変わっていく。アイススレッジ・ホッケー日本代表は世界の頂点の場で、その競技の過酷さ、そして面白さをアピールする事で、一つ歴史を作ったことになる。

 さて、アイススレッジ・ホッケーを競技として振り返って見る。日本とアメリカでは、チームにどのような差があったのか。日本に全く勝算はなかったのか。
 まず試合を観戦してて圧倒的だなと思ったのは、アメリカチームのスピードと身体機能の高さであった。ゴール前では双方乱れて肉弾戦必至になるが、この時に体格の大きいアメリカ人選手に日本人選手は弾き飛ばされてしまう場面を何度も見た。それでも日本人選手はすぐに大勢を立て直し、フォーメーションを組み直す。しかし後半はやはり体力が尽きたようだ。
 それに加えてアメリカチームは、日本チームの正確なフォーメーションを徹底的に研究済みで、例えれば、かつてサッカー加茂JAPANがやったようなゾーン・プレスを一斉に仕掛けてくる。これでフリーな「空間」をことごとく潰されると、結局ロングパスに頼らざるを得なくなり、カナダ戦の時のような日本チームの良さが出し切れていなかったように思う。
 日本チームとアメリカチームの差は結局のところ、アイスホッケーというスポーツの文化的土壌の成熟度と、障害者スポーツに関する社会的認知度の差が現れた結果なのかもしれない。これらの差は競技環境にも影響を及ぼし、一方のチームは十分な数の指導者と時間と資金をバックボーンに最高のポテンシャルを発揮し、他方のチームは厳しい競技環境の中で死力を尽くして挑んだ結果だという事である。
 プロレス・ティーパーティーで同席する機会があった馳浩衆議院議員の話によれば、パラリンピックに予算を出しているのは文科省ではなく厚労省とのことであり、そのことの一点をとっても、国はこれを未だに福祉の一環として捉えているのがわかる。

 試合前日の選手の言葉で印象的なものがあった。番組アナウンサーに決勝への抱負を聞かれて、「自分たちは2番になるためにここへ来たわけではない」と答えた選手がいた。スタジオのアナウンサーも、それに呼応するように手を叩いて「そうですよね! 2番になるためじゃない!」と興奮した表情で言った。
 どこかで聞き覚えのある言葉ではないか。昨年の事業仕分けで、「メダルが取れないようなマイナー競技にお金をかけても無駄だ」、「世界の中で2番ではダメなんですか」などと得意満面でこのような事を言ってのけた民主党議員の顔を数人思い浮かべた人も多いだろう。さすがにあの総理もアルペンやノルディックで日本人選手が金メダルを獲ったのに驚いてか、国からの援助が十分ではない事を電話で詫びたそうだが、遅すぎる。
 日本チームが今回世界の頂点の舞台で戦って、銀メダルを獲れたのは、最初から世界の2番を目指して戦ったからではない。1番を目指したからこそこのような快挙を成し遂げる事が出来たのである。
 昨年の事業仕分けを華々しく演出したメディアも少しは反省して、障害者スポーツの最前線で世界と戦う彼らの競技環境の向上のために、ジャーナリズムは何をやるべきかを今こそ考えるべきである。そもそもスポーツ担当の記者が、パラリンピックの予算が厚労省から出ている事に、まずは疑問を持たなくてはならないだろう。そして、こんな過酷な環境にありながら、このような快挙を成し遂げた日本代表のことを記憶の中に刻んでほしい。

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