« 【書評】 福本和夫著 『日本捕鯨史話―鯨組マニュファクチュアの史的考察を中心に―』教養選書No.83(法政大学出版局) | Start | 【メディア】 メディア・パトロール・ジャパン、遂に始動 »

21. Februar 10

【慶應義塾大学】 『病める舞姫』を秋田弁で朗読する(2010年3月9日、ザムザ阿佐ヶ谷で上演)

Photo

 財団法人東京都歴史文化財団と慶應義塾大学の主催で、土方作品についての新しい解釈と試みが行われようとしている。
 『病める舞姫』は、舞踏家・土方巽が故郷・秋田で過ごした少年時代の記憶を綴ったもので、原典は1977年から1978年にかけて雑誌『新劇』に連載されたものである。この作品は土方の少年時代の記憶を綴ったものではあるが、具体的な地名は登場せず、文体もほぼ標準語で書かれている。今回それを、あえて秋田弁で朗読することで、土方巽の持つ世界観、身体性に肉薄しようという大胆な試みである。
 この企画は、財団法人東京都歴史文化財団が「東京文化発信プロジェクト」の一環で、学生とアーティストによる交流プログラムの中で実現したものである。これに自治体の賛同も加わり、いわば芸術文化活動における産学共同プロジェクトのようなものになっている。
 一時期わが国で企業メセナ・ブームが起こった頃、各地でもっと華やかな文化交流事業が多く立ち上げられた時代もあったが、現在は見る影もない。そのような情況の中で、地道に文化交流プロジェクトを継続している私学もいくつか存在する。例えば多摩美術大学が芸術学部専攻の学生の演習として行っている「TAMA VIVANT」がその一つだ。これは多摩美の学生らが数名でチームを組み、プロとして現役で活動している現代美術作家と各々がコンタクトをとって、学生自らが展覧会の企画・運営をするというものだ。学生はまず、出品依頼する作家の選定作業から入り、次に作家と直接コンタクトをとり、展覧会の趣旨のプレゼンテーション、出品依頼、カタログ作成、作品の搬入・搬出、展示の一切を行う。学生らはこれを通して、実際の展覧会の立ち上げ方を学ぶとともに、プロの現代美術作家の現場も見ることができる。
 今回、慶應義塾大学が中心となって行うこの企画も、プロの劇団員と学生らが共同で上演するものである。舞台に立つ学生の中には、大学の講義で初めて土方の存在を知ったという学生もいる。もちろん秋田弁をしゃべったこともない学生もいる。このような彼らが土方巽の持つ「言葉」と「身体性」に、東北・秋田の深くクローズドされた空間から迫ろうとするものである。

 上演場所のザムザ阿佐ヶ谷という空間は、阿佐ヶ谷では有数の小劇場である。有名なミニシアター「ラピュタ阿佐ヶ谷」が併設され、「山猫軒」という地元グルマンにも評判の小さなレストランもある。向かいの場所には現在は東亞興行が経営・管理するスポーツクラブが立っているが、ここは昔、名画座「阿佐ヶ谷オデヲン座」があった場所だ。
 阿佐ヶ谷という空間は土方巽とも関わりが深い。土方と交流があった暗黒舞踏集団「大駱駝艦」の麿赤児、「情況劇場」の唐十郎、劇団「天井桟敷」の寺山修司らも、もともと阿佐ヶ谷を活動拠点や住まいとしていた。JR阿佐ヶ谷駅の高架線の下には、寺山修司もよく通った定食屋「チャンピオン」があり、居酒屋街には今でも「天井桟敷」の系譜を継ぐ劇団関係者が経営しているバーもある。北口には河北総合病院があり、ここは寺山修司が息を引き取った場所である。
 土方巽が『病める舞姫』を連載していた1970年代中葉期は、暗黒舞踏、小劇団が全盛の時代であり、1975年に寺山修司が上演した市街劇『ノック』は、阿佐ヶ谷南1丁目あたりから五日市街道を越えた成田東1丁目までの広範囲で同時多発的にハプニング、路上劇、パフォーミングアーツが展開されるという野外劇で、「天井桟敷」の一団が荻窪団地付近のマンホールの中から全身包帯だらけの正体不明の姿で登場したことで騒ぎとなり、警察が出動したのは地元では有名な話。阿佐ヶ谷という空間はこのような特異な磁場を持った空間なのである。
 今回、土方の誕生日にあたる3月9日に、阿佐ヶ谷という非常に磁場の強い空間で、秋田弁によるテクストのみで、一体どんな土方の「病める」身体が立ち上がってくるのか、注目したい。

東京文化発信プロジェクト 学生とアーティストによるアート交流プログラム
『「病める舞姫」を秋田弁で朗読する』米山九日生少年に捧ぐ
2010年3月9日(火) PM18:30開場 PM19:00開演
場所■ザムザ阿佐ヶ谷
料金■入場無料(要予約)
予約問い合わせ■慶應義塾大学アートセンター
TEL 03-5427-1621
FAX 03-5427-620

www.art-c.keio.ac.jp
maihime-ac@adst.keio.ac.jp
【主催】
東京都
東京文化発信プロジェクト
財団法人東京都歴史文化財団
慶應義塾大学
【企画】
森下 隆(土方巽アーカイヴ)
【運営】
慶應義塾大学アート・センター

■土方巽関係レヴュー一覧■
【研究会】 土方巽『舞踏大解剖2』(慶応義塾大学日吉キャンパス)
【論集】 『慶応義塾大学アート・センター 年報14』2006/07

----------------------------------------
【お知らせ】
twitterをはじめました。こちらでは政治家、経済専門家、医師、ジャーナリストらの皆さんと、わが国の外交、防衛、政治・経済、医療行政について討論をしています。

http://twitter.com/JPN_LISA
----------------------------------------    

|

« 【書評】 福本和夫著 『日本捕鯨史話―鯨組マニュファクチュアの史的考察を中心に―』教養選書No.83(法政大学出版局) | Start | 【メディア】 メディア・パトロール・ジャパン、遂に始動 »

スポーツ・身体表現」カテゴリの記事

慶応義塾大学」カテゴリの記事

Kommentare

Kommentar schreiben



(Wird nicht angezeigt.)




TrackBack


Folgende Weblogs beziehen sich auf 【慶應義塾大学】 『病める舞姫』を秋田弁で朗読する(2010年3月9日、ザムザ阿佐ヶ谷で上演):

« 【書評】 福本和夫著 『日本捕鯨史話―鯨組マニュファクチュアの史的考察を中心に―』教養選書No.83(法政大学出版局) | Start | 【メディア】 メディア・パトロール・ジャパン、遂に始動 »