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05. Januar 10

【映画】 キムタク主演の実写版・宇宙戦艦ヤマト 「Space Battleship YAMATO」(予告編)

 年が明けてから一斉に,今年12月に公開予定の宇宙戦艦ヤマト実写版のCMが流れるようになった。私が確認したのは,大晦日にテレビ東京で放送されたジルベスター・コンサートの年が明けてからの一発目のCMである。そこでヤマト実写版の30秒の短い映像を確認した。このテレビ東京の番組自体が今回は「宇宙」をテーマにしたもので,カウントダウンの曲にはホルストの組曲『惑星』の「ジュピター」が演奏された。「惑星」で年が明けてからは宇宙飛行士の野口さんの宇宙からのライブ中継もあり,うまい番組にCMを入れきたものだ。(因みに,野口さんからはJ.シュトラウスのドナウがリクエストされた。これはウィーンフィルのニューイヤーコンサートでは定番の曲でもあり,キューブリックの『2001年』でも使われた曲でもある。)

 今回初めて公開されたヤマト実写版CMの映像には,いろいろな要素,メッセージが込められている。映画好きの人ならば,そこからいろいろなイメージが広がるだろう。ファーストカットはセピア調に赤茶けた大地に,主演の木村拓哉と思われる人物が核防護服のような宇宙服を着用して立っているシーンが遠景で登場する。そしてカメラがズームして古代進(木村)のアップ。
 遠景のシーンでもしこのままさらにカメラをズームアウトするか,もしくは左右に振れば,そこにはガミラスの遊星爆弾による核汚染で干上がった海底に埋まっている帝國海軍の戦艦大和の姿があるはずだ。一瞬映る古代(木村)の呆然とした表情は,海底に埋まる戦艦大和を発見したからではないかと想像できる。
 CMの映像は,この後すぐに,ヤマト艦内を早足で歩く古代(木村)のカット,続いて第一艦橋の様子が映り,古代(木村)の背後には沖田艦長(山崎務)の姿がある。そして戦闘シーンでは女性パイロットの黒田メイサの姿が一瞬だけ映る。この一連のシークエンスを見る限り,その暗く硬質な質感は,『バトルスター・ギャラクティカ』や,『スタートレック』シリーズにおける一連のボーグ戦のような雰囲気である。ヤマト第一作をベースにストーリーを組み立てるのであれば,我々地球人類の敵となるのはガミラス人というヒューマノイド型異星人だが,ここでガミラス人の代わりにサイロンやボーグなどの機械生命体が登場してもまったく違和感がない。ただし一点において,ギャラクティカやUSSエンタープライズ号とヤマトが異なることは,前者はまったくの空想上の宇宙船であるが,ヤマトはその前身として戦艦大和という骨格を持っていることである。ヤマトの物語は遠い未来を設定として描かれているが,物語の根幹は西暦1941年,即ち,帝國海軍に戦艦大和が誕生した時に存在しているのである。この点が極めて特異なのである。
 また,ファーストカットの干上がった大地のシーンは,色調といい,古代(木村)が着用している防護服といい,リンチが映像化した『デューン砂の惑星』の雰囲気もある。浦達也の言うところの“レトロフューチャー”な雰囲気だが,これは山崎貴の作るCGが得意とするところだ。古代(木村)が佇む赤茶けた大地も,もちろん九州南端のはずであるが,このシーンで日本の地名が唐突に登場してもさほど違和感はない。つまり良い意味でワールドワイドな世界観が作られており,後は脚本次第で長らく日本映画が苦手としてきた「宇宙」を舞台にしたSF映画の完成された姿を初めて見ることができるかもしれない。

 なんだかんだと,わずか30秒の映像について長々と書いたが,ようするに,キムタク主演の実写版ヤマトもなかなか良くなりそうじゃないか,ということが言いたかったのである。
 ヤマトには昭和時代からのうるさ方のファンがたくさんおり,その中にはアニメ第一作原理主義のものたちも多く存在する。彼らは現在劇場公開中のアニメ版新作『宇宙戦艦ヤマト復活篇』すら認めたがらないのは当然だ。またそれに加えて,我々日本人にとってはヤマトの前身である戦艦大和にもいろいろな思いがあって,それぞれの日本人の心の中に大和は眠っているわけである。“これぞヤマトだ”というものがそれぞれにあるのであるから,誰が監督をやっても,誰が脚本を書いても,誰が古代進を演じても,“それは違う!”という声は必ずどこからか出てくるのは当たり前である。
 この状況を克服するためには,二つの方法しかない。まず一つ目は,ヤマトが時を経て,バッハやシェイクスピアのような「古典」になることである。そうすれば,蜷川マクベスのような事をやっても怒る人はいない。新しいヤマトの芸術表現として認知されるわけである。そして,二つ目として,旧来のヤマトスタッフではなく,ヤマトを見て育った若いクリエイターに制作を任せることである。かつて子供時代,『仮面ライダー』初期シリーズを見て育った雨宮慶太が,後に優れた造形作家,特撮監督になっていったように,ヤマトにもこのような新たな才能の注入が必要なのである。
 このような意味では,ヤマト実写版の監督に山崎貴が名を連ねていることは,ヤマトにとっては良い選択であったといえる。何故ならば,山崎貴がその先鞭をつけてくれたことによって,今後いろいろなクリエイターたちがヤマトを制作する可能性が広がったからである。私は個人的に,庵野秀明版ヤマトも見てみたいし,なんならばリドリー・スコットやジェームス・キャメロンらの外国人監督でも良い。ヤマトの前身が戦艦大和であるという身体性さえ崩さなければ,あとはいかに表現するかは監督自身の“センス・オブ・ワンダー”次第である。

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