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14. August 09

【アート】“街角アンデパンダン”としての 『阿佐ヶ谷七夕まつり』

 8月5日~9日にかけて,毎年恒例の「阿佐ヶ谷七夕まつり」が阿佐ヶ谷パールセンター商店街で開催された。これは高円寺阿波踊りと並んで,東京23区では昔から良く知られた夏祭りのひとつである。
 「阿佐ヶ谷七夕まつり」の歴史は古く,今年で56回目を迎える。かつて昭和の時代に毎年七夕まつりを見て育った地元の子供たちが,家業の商店を継いだものや,また,阿佐ヶ谷という街を気に入り,ここで店を構えるようになった新規の商店主たちが,毎年工夫を凝らしたオブジェを一堂に飾り,その出来や人気を競い合うという昔ながらの町内対抗の祭りだ。
 その様式は昔と今ではさほど変わっていないが,商店街の風景にはあきらかな変化が見られる。

 かつて,「大店法」の改正によって(2000年「新大店法」),商店街が隣接する地方都市にも大規模マーケットが容易に進出できるようになった。これにより,週末に車で郊外に出かけて買い物をするという新たな消費者動向が見られるようになる。言い替えればこれは,消費者は,かつてのように地元の商店街では買い物をしなくなったということである。この結果,消費者の生活圏の変化とともに地方都市の商店街は軒並み潰れていったのである。町の商店街の衰退の理由は,他の要素として少子高齢化による後継者不足,不況なども上げられるが,それに拍車をかける形となったのは,間違いなく「大店法」である。
 規制緩和とともに進められた新たな大店法は,建前上は,近隣商店街との相乗効果を謳ってはいたのだが,実際には,商店街から多くの客が奪われたかっこうとなり,廃業せざるを得ない店が後を絶たなかったのである。近年しばしば目にするシャッターが降りた地方都市の商店街はその象徴である。仮に,「経済」というものをバイタルサインと規定し,「物流」というものを血液に例えた場合,町の多くの商店街は循環器不全により末端部分で壊死を起こしているような状態である。「金」「人」「物」の全てが滞っているのである。
 「大店法」と並び,わが国の産業構造を大きく変えてしまったのは,ガット・ウルグアイラウンドの「ミニマム・アクセス」から始まった,一連の「米・牛肉・オレンジ」輸入自由化問題である。これにより,昔からあった町の八百屋も姿を消したのである。そしてここへきて,「農産物FTA」(農産物自由化貿易)を堂々とマニフェストに入れている野党まで現われたことで,農業という,いわばわが国の骨格に相当する部分まで,なし崩しになる可能性をもはらんでいる。「大店法」「ミニマム・アクセス」「農産物FTA」は,国を支えてきた地域産業の中に,「文化」を見いだせなかった人,あるいは地域産業もアートと並び「文化」であると認識できなかった発想の貧しい起業家や政治家の感性によって立ち上がったものである。こういう方々は,当事者である漫画家の里中満智子氏らもその有用性を訴えていた「国立メディア芸術センター」のことを“国営漫画喫茶”などと的外れな事を平気で言ってしまうのである。

 「阿佐ヶ谷七夕まつり」は,このような商店街にとっての激動の時代もくぐり抜けてきたものである。それだけに,この祭り自体がその時の世相を反映しているのは言うまでもなく,商店主たちが腕を競い合うハリボテのオブジェは,その年に話題になった人物やキャラクターをモティーフにされることが多い。そしてこれらの作品は来場者の投票によって各賞が決められる。
 毎年定番となっているのは,ジブリ作品やポケモンのキャラクターである。これらのものは毎年どこかの商店主が必ず作っているものだ。その中で,今年“新顔”として目についたのは漫画『もやしもん』のキャラクターとオバマ大統領だ。実在の人物がモティーフとされる場合は,これまでは圧倒的にスポーツ選手が多かったが,政治家がモティーフにされるのは異例である。パールセンター商店街の中には地元選出の石原のぶてる衆議院議員の事務所もあるので,今後,地元阿佐ヶ谷から総理誕生とでもなれば,石原議員のハリボテ人形も登場するのであろう。
 近年,地方都市で町の一角や商店街をひとつの空間に見立てたアート展がしばしば開催されているが,近頃は企業塾出身のイベント屋や広告代理店がこれらのものに参入するようになってから,とたんにつまらないものになってきた。なにがつまらないのかといえば,それらのものは一律に“東京的”なのである。体裁や見栄えは良いものの,その町を隅々まで身体的に捉えていく視点が欠けているので,地元に馴染まないのである。その点「阿佐ヶ谷七夕まつり」は,“あか抜けない”とは言われるが,その独特のアナーキーさがイベント屋や広告屋の食い物にされずにすんでいるのである。この独特のアンデパンダン的な雰囲気が,「阿佐ヶ谷七夕まつり」の面白いところだ。

 長年続いてきた「阿佐ヶ谷七夕まつり」はいつの時代も安泰であったかといえばそうではない。阿佐ヶ谷の昔を良く知る地元の人たちに言わせると,やはり一昔前の方が展示内容も華やかであったそうである。今とは比較にならないほどのもっと多くの空中展示物がひしめき合い,力作も多かったらしい。言われてみれば,年々展示物の数は減っているようにも見える。それは,近年目につく商店街の様変わりとも無縁ではない。
 まずパールセンターの入口から青梅街道に抜けるまでの出口を歩いてみて感じることは,昔は個人商店であった店舗のほとんどがビルになり,店をたたんで外食チェーンや携帯電話屋,コンビニなどにフロアを間貸ししているところが増えている。昔ながらの店舗も代が変わり,かつては町興しのために頑張っていた第一世代が引退してしまっている。このことが原因なのか,商店街で店を構える人の中には阿佐ヶ谷とは縁もゆかりもない人たちもいて,祭りに対するこだわりにも相当の温度差があるのは事実だ。そして当然のことながら,祭りとは義務でやるものではないので,商店主の中には出し物を出品しない人たちもいる。七夕まつりでこのような店の前を通ると,そこだけ唐突に空洞のような空間が現れるのである。
 その一方で,地域の中に溶け込もうと積極的に参加している新規参入者たちもいる。かれらの多くは主に外国人商店主である。阿佐ヶ谷には中華を筆頭に,インド,地中海,東南アジアなど,あらゆる多国籍の料理店が並んでいる。その中で,地元商店街の一員として町づくりに積極的に関わるために,露店で品物を出品する外国人商店主も増えてきているのである。七夕まつりのもう一つの目玉である露店が,旧来の露店とは異なって,多国籍の美味しい食べ物が並ぶと評判なのは,自慢の郷土料理を持ち寄る外国人商店主の貢献も無視できない状況となっている。
 阿佐ヶ谷の町からパールセンター商店街が無くならない限り,七夕まつりはこれからも続いて行くとは思われるが,地方都市の商店街と比べて郷土色が鮮明に出しにくい都市型の商店街が今後どのように変容していくのかは,まだまだ観測の余地はあるであろう。

02
パールセンター中ほどに来て,突然現れたオバマ大統領
子供たちにも良く知られているようで,いたるところで「オバマ! オバマ!」という声が聞こえていた。

03
炉端焼屋が作ったホッケの親子
完成される前からこれを見た人たちの間では,鯵だ,鯖だといろいろ議論をよんだらしいが,ホッケの親子だそうである。

01
もやしもん
アニメ化をされて,一昨年からひそかなブームをよんでいる「もやしもん」の菌類のキャラクター。
露店がひしめく中でこのようなものが天井からぶら下がっている構図は,ほんとうにシュールである。0-157の姿も確認。

Photo
清志郎のキャラ風
七夕まつりの作品は,おおくの場合キャプションが付いていない。したがってこちらは,“たぶんアレを作ったのであろうな”と密かに思いながら見るのが楽しいのである。
この作品にも,特にキャプションは付いていなかったが,これは忌野清志郎がサインに使っていたキャラクターではないであろうか。

 

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