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18. Juli 09

【CS放送】 石破茂大臣,宇宙戦艦ヤマトを熱く語る(CS放送ファミリー劇場 『アニメ問わず語り』)

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 16日深夜にCS放送ファミリー劇場で放送された番組『アニメ問わず語り』のゲストに登場した石破茂農林水産大臣が,ヤマトについて熱く語った。
 この番組は,あえてアニメの評論家や雑誌の編集者ではなく,普段は他の分野で仕事をしている各界のアニメ好き著名人をゲストに呼んで,5分足らずの短い時間ではあるが,日本アニメの魅力について語ってもらう番組である。
 今回ゲストで登場した石破大臣は,アニメと艦船模型の愛好家として知られている。部屋には護衛艦「しらね」などの自衛隊の艦船模型が並んでいるほどだ。そんな石破大臣はやはり子供の頃からこの類のものが好きだったようで,大臣が少年時代に出版されていた『少年画報』や『冒険王』などの少年誌に付録として付いてきた紙製の大和やゼロ戦の模型をたくさん作って遊んだそうである。
 石破大臣が日本アニメの中で特に大好きなのは『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ。その中でも『さらば宇宙戦艦ヤマト』には特別の思いがあるようだ。これには大臣がもともと子供の頃から艦船模型に親しんできたという背景もあるが,もうひとつには,当時の日本の放送ネットの地域格差も多分に影響を与えているのではないかと思われる。
 石破大臣の地元である鳥取は,昔は日本テレビ系列の日本海テレビしか民放チャンネルがなかったそうである。だから『少年画報』や『冒険王』でテレビで放送中のアニメや特撮ヒーロー番組の記事を見ても,自分の家ではテレビが映らないからいつも悔しい思いをして過ごしたそうである。そんな状況の中,空前のヤマト・ブームが起こり,映画館でこの作品が見られると分かった時,喜んで映画館に通ったそうだ。特に,『さらば~』の方は連日のように映画館に通い,1日に2回も3回も見ていたら,当時の彼女から“頭がおかしいのではないか”と言われてしまったそうである。しかしこれは石破大臣の方が気の毒だ。子供時代から民放ネットの情報格差でとてつもない飢餓状態に置かれていたところにもってきて,空前のヤマト・ブームでそれが劇場で見られるとわかれば,お腹一杯食べたくなるのが人間の「性」ではないか。
 私は石破大臣のこの言われようをみて,ずいぶん前に読んだ佐藤健志の著書のことを久々に思い出してしまった。
 当時,若手論客として売り出し中だった評論家の佐藤健志の著書『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)の中で,著者の佐藤健志が当時交際していた女性と「今まで見た映画の中でどの映画が一番良かったか」との会話になり,その女性がヤマトを挙げたことについてのエピソードがでてくる。この時の佐藤健志は,“まったく理解できない”,“他にもっと違う映画はないのか”,“なぜ,よりによってこんな作品を一位にあげるのか”という具合に,この女性の回答にたいそう当惑している様子であった。しかし,当該女性の方こそ,もしこの佐藤健志の著書を読んでいるとしたら,彼女の気持ちの方もいたく傷つけられたのではないかと思うのである。石破大臣もこんなことを言われてしまったのであろうか。
 ある一つの事柄や事物に対して,突出した興味を示す志向について,その背後にある個別の状況が理解されぬまま,ただ単に「オタク」と悪意あるフレームで見てしまうのは少々早計であり,それは一種の偏見ではないのかと,今回石破大臣の話を聞いていてつくづく思った次第である。なによりも,「ある一つの事柄や事物に突出して興味を示す志向」というものを否定してしまったら,世の中からは芸術家やクリエイターはいなくなるであろう。

「さらば宇宙戦艦ヤマトには賛否両論いろいろあります」by石破茂
 『さらば~』で最後にヤマトが白色彗星帝国の巨大戦艦に体当たりをするということについて石破大臣は,安否両論ある結末だが,この物語の中でデスラー総統がかつての侵略者から心根の良い人間に変わっていくのが救いであり,その部分も含めて何度見ても感動するそうである。このくだりについては,2006年に公開された戦艦大和の実写版映画『男たちの大和』に併せて出版されたムック『僕たちの好きな戦艦大和』(宝島社)の中でも詳しく語られている。このムックはまるまる一冊,戦史家,ラノベ作家,特撮ライターなどが戦艦大和だけについて語り尽くした本だ。その中で4ページにわたって石破大臣の特別インタビューが収録されている。
 このインタビューの中で石破大臣は,祖国ガミラス復興のために恥をしのんで彗星帝国に身を寄せているデスラー総統が,これまでの漫画や日本アニメで描かれてきたような単なる悪者で終わらなかったことに,いたく心を惹かれている様子である。これには,政治家の目で見た政治家としてのデスラー総統に対する複雑な思いがよく伝わってくる。実際の政局でも,自分自らが誰かのために泥をかぶったり,火中の栗を拾わなければならない局面は多々あるであろうから,本来ならば人一倍プライドが高く,その全身が美意識の塊のようなデスラー総統が,他国に身を寄せるという状況がどれほど屈辱的であるかがよりリアルに感じるのであろう。

「美しく,強く,はかない――その生涯に一種魅了されるところがあります」by石破茂
 ヤマトについて語っていると,最終的には行きつくところは戦艦大和である。当たり前であるが,ヤマトがスタートレックやギャラクティカの宇宙船と異なるところは,その前身が太平洋戦争の正史と直接繋がっているという部分である。それゆえに,例えばシド・ミードがデザインした第18代ヤマトが登場するOVA『YAMATO2520』は,太平洋戦争の正史を継承する戦艦大和が,その船体はもはや無く,ネームシップとしてだけ存在しているという状況から,これをヤマトとは認めないという考え方もでてくるのである。
 この冬に公開される劇場版『宇宙戦艦ヤマト』(復活篇)でも,新たにヤマト級戦艦を新造するのではなく,前作「完結編」で船体が真っ二つに折れたままアクエリアスの海に轟沈したヤマトを再び蘇らすという設定にしたもの,こうしなければ,それは“ヤマト”ではなくなってしまうからだ。
 では,ヤマトの前身である戦艦大和の他に悲劇性をもった戦艦はなかったのかといえば,そんなことはない。大和の同型艦であった武蔵や,大和より一世代前の長門にしても,それなりに悲劇性を持っている。実は石破大臣は,自分の選挙区(鳥取1区)と同じ出身である猪口大佐が艦長だった武蔵の方が多少思い入れが強いということを前出のムックのインタビューでも語っている。それでも,宇宙戦艦が武蔵ではなく大和でなくてはならなかった理由は,史上最強と言われながらもその「はかなさ」にあると語っている。

「もしも開戦に「大和」「武蔵」が間に合えば,こんなことができたかも」by石破茂
 近年の架空戦記といわれるものには,大和がとてつもないスペックと強さで登場することが多々あるが,これはかつての少年少女たちが秘密兵器というものに抱いた一種の憧れやフェティシズムであろう。誰しも自分が好きな怪獣が最強でありたいと願うものである。しかし石破大臣まで,密かにこんな架空戦記のようなことを考えて楽しんでいるとは知らなかった。『僕たちの好きな戦艦大和』の中で石破大臣は,もし大和と武蔵が真珠湾攻撃に加わっていたらどうなっていたのか,ということも話している。まず正史の通り,最初は機動艦隊が敵基地を叩いて,その後に大和,武蔵が行って,艦砲射撃で徹底的に叩く。その後にロサンゼルスまで行って,一気に西海岸を陥落せしめる,というものである。たしかにこうなったならば,その後戦局は大きく異なったであろう。

 『アニメ問わず語り』では,短い時間でしか石破大臣の話を聞くことしかできなかったが,もっと長く,1時間2時間とこの人にヤマトのことを語らせたら,面白い話がたくさん聞けるだろう。先日も,某所で偶然にも大和戦史家で呉の大和ミュージアムの館長である原勝洋氏と同席する機会があり,大の大人が5,6人も囲んで,小1時間ほど大和談義で華が咲いたが,この席に石破大臣もいれば一層に盛り上がったことであろう。

■石破 茂ブログ■
http://ishiba-shigeru.cocolog-nifty.com/

■ファミリー劇場■
http://www.fami-geki.com/

■井上リサによる「宇宙戦艦ヤマト」関連コラム■
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