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07. Juni 09

【映画】 林家しん平監督 『深海獣雷牙』 ついに完成

 林家しん平監督が昨年から制作に取り掛かっていた新作怪獣映画『深海獣雷牙』がついに完成した。昨日スタッフの方から連絡をいただき,それによると6月にはマスコミ関係者,特撮関係者向けのプレス試写会と,一般向けの先行上映会を行った後,夏に公開となる模様。
 しん平監督がこの作品に取り掛かったのは,昨年の8月あたりからである。それは,昨年しん平監督の商業ベースとして公開された第1弾の怪獣映画『深海獣レイゴー』の上映と併せて新文芸坐で行われたオールナイトのトークショーの席で明らかにされたものだ。レイゴーの上映が終わってトークショーに入った時,エンドロールにさりげなく映り込んでいた“レイゴー2”という文字を,会場のファンは見逃さなかった。私もトークショーの中で,この,あたかもレイゴーの続編でも作られるかのようなことをによわす“レイゴー2”というクレジットについて忌憚なく監督に向けて突っ込んだところ,「実はレイゴーの2作目の制作が本日決定しました!」という答えが突然返ってきて,会場のファンも私もたいへん驚いたのだが,すぐさま会場からは大拍手が起こった時のことが蘇ってくる。

 しん平監督は,これまで金子修介監督の平成ガメラ3部作にインスパイアされた自主製作映画なども制作するなど,ふだんから“怪獣魂”あふれる監督である。
 怪獣映画における醍醐味とは,もちろん登場する怪獣が格好が良くて,その怪獣に破壊されるビルや街並みにエロスやカタルシスを感じることである。しかしそれだけではなく,しん平監督の作品は,その怪獣の存在が,当事者としてのわれわれとどのように関わっているのかというリアリズムも同時に構築していくことが,脚本作りの段階からの独創性を浮かび上がらせている。
 しん平監督が得意とするのは,これまで数多の特撮番組,怪獣映画では空白地帯となっていた「場」や「空間」,あるいは「余白」を掘り起こしていくことである。初代コジラを契機に連綿と続くわが国の怪獣文化の中で,もうすべてのことがやり尽くされてしまったように感じるが,それでもしん平監督は,そのすべてのことがやり尽くされてしまったように見える世界の中にも,わずかな余白を見出して,そこで新たな物語を構築していくのである。
 前作『深海獣レイゴー』では,物語の舞台を太平洋戦争時代に設定した。われわれが子どもの頃より見てきた数多の特撮番組,怪獣映画の時代設定は,同時代か,もしくは近未来の日本が設定であることが多かった。したがって,大怪獣を迎え撃つ防衛隊も,オーバーテクノロジーで武装した史上最強の部隊である。わが国自衛隊も,ここぞとばかりにレーザー兵器やミサイルはもとより,核をも凌駕する戦術兵器で大怪獣と応戦する。テレビ画面や映画のスクリーンでミサイルや光線砲が飛び交うシーンはお馴染みのシーンである。
 このような状況に見慣れてきたわれわれにとって,太平洋戦争時代にゴジラ級の大怪獣が存在していたという設定自体が非常に新鮮なものであった。そしてこの大怪獣を迎え撃つのは自衛隊ではなくて,戦艦大和を旗艦とする帝國海軍の連合艦隊なのである。深海から出現した大怪獣レイゴーめがけて,大和の94式46サンチ主砲弾が炸裂し,雪風以下駆逐艦隊が,円形布陣でレイゴーを包囲して砲弾を雨あられと浴びせかけるのだ。今までどんな怪獣映画でも見たことのない大怪獣と近代火器の激突に,まさに胸躍る思いがした。
 そして今回公開される『深海獣雷牙』は,タイトルでもわかるとおり,前作のレイゴーとは何らかの関わりがあるのがわかるであろう。ここに登場する雷牙という大怪獣は,レイゴーと同族のものか,あるいはかつて大和と戦ったものの生き残りなのかは映画本編を見てからのお楽しみだが,あの頃のレイゴーよりもさらにパワーアップして,海から陸に上がってきたものであることは間違いない。今度はこの大怪獣が,浅草の町で大暴れするのである。
 今回,しん平監督が雷牙の世界で掘り起こしてきた「余白」とは,浅草という“町内”である。われわれは,大都市や有名観光地のランドマークが怪獣に壊されるのはさんざん見てきたわけである。そこで逃げ惑う人々も,怪獣目線で見て豆粒のような存在だ。しかし,浅草という小さな町で怪獣を大暴れさせることによって,そこで暮らす人々と怪獣との距離感がいきなり縮まるのである。もはや怪獣は,噴煙立ち込める瓦礫とともに遠景として眺めるものではなく,風呂屋や床屋の窓から見える存在なのだ。人々を怪獣から守る防衛隊も,自衛隊規模の大部隊が展開されるのではなく,台東防衛隊という地元自治体の自警団のようなものである。この存在も,例えば町の消防団やボウイスカウトなどの慈善団体に近いニュアンスがあり,浅草の路地を隔てた怪獣との白兵戦も期待できる。
 このリアリズムが,昔から火事と祭りが大好きそうな浅草の人々の暮らしの中で,どのように作り込まれているのか興味深い。まさに怪獣という“祭り”が,夏の浅草の夜空を派手に彩るような作品になりそうである。

『深海獣雷牙』公式web
http://d-raiga.jp/
『深海獣雷牙』公式ブログ
http://blog.d-raiga.jp/

■先行上映■
6月27日(土)22:30~池袋・新文芸坐
「深海獣雷牙」先行上陸!特撮怪獣天国
林家 しん平監督「深海獣雷牙」「深海獣レイゴー」
手塚 昌明監督「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」
雨宮 慶太監督「ゼイラム」
オールナイト4作品上映と3監督によるトークショー
挿入歌の「らぶぶ(あやか・かおり・ケイリ)」も登場

■井上リサによる林家しん平監督作品レビュー記事一覧
林家しん平監督 『深海獣雷牙』 撮影快調!
林家しん平監督 『深海獣レイゴー』(2008・インターメディア,於・北沢タウンホール)
林家しん平監督 『深海獣レイゴー』 遂に公開決定

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Kommentare

 何時もお世話になっております。「ガメラ医師のBlog」管理人でございます。
今回は「深海獣雷牙」完成情報のご案内、誠に有難うございました。ポスプロのご様子は公式Blogで拝見しておりましたが、最近多忙に紛れて暫くご無沙汰しておりました。
 新作の完成、そして先行上映会の決定と、今後が非常に楽しみになってまいりました。今月はたしか、「零号」「ゲハラ」両DVDも発売予定だったかと思います。暑い夏になりそうです。^^)

Verfasst von: ガメラ医師 | 09. Juni 09 17:40 Uhr

ガメラ医師さま
こんにちは
「雷牙」は堂々完成ということだそうです。
11日にはプレス試写会があるので,一足先に行ってまいります。

>新作の完成、そして先行上映会の決定と、今後が非常
>に楽しみになってまいりました。今月はたしか、「零
>号」「ゲハラ」両DVDも発売予定だったかと思います。暑
>い夏になりそうです。^^)

まさにおっしゃるとおりで,しん平監督をはじめとする“怪獣魂”あふれる方々のおかげで,ここ最近は,毎年新作の怪獣映画が見れるという至福の時を過ごしています。

Verfasst von: 井上リサ | 09. Juni 09 21:22 Uhr

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» ガメラ:深海獣雷牙関連情報 2009/06/08 [ガメラ医師のBlog]
 本日二本目の更新です。一本目「八代海底に謎の地形 09/06」はこちら。  本項は、「駕瞑羅4(ガメラ4) 真実」を製作・監督された落語家、林家しん平師匠が現在製作中の新作怪獣映画、「深海獣雷牙」についての関連情報をまとめてご紹介しております。 暫らく追跡が疎かになっておりました間に、いろいろ進展がございました。^^;)ゞ 前回の「 /03/28」はこちら。  しん平監督、TV番組にゲスト出演: 「 08/09/27」で「零号関連情報」をご紹介した、 『ヒロクン風呂』 http://hiro... [mehr]

verlinkt am: 09. Juni 09 17:17 Uhr

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