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06. Juni 09

【アート】詩人・加島祥造展 「伊那谷からバリへ」(2009年6月8日~27日,Bar Kajima・銀座)

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 詩人で英米文学者の加島祥造さんから個展のご案内が届く。
 加島祥造さんと私とは,ユングの解釈をめぐる一連のやりとりがきっかけで6年ほど親交が続いている。もともとの始まりは,私の著書『芸術・思想家のラストメッセージ』(フィルムアート社)の中で,晩年のユングの短い評伝を書いた時に,ドイツ語で書かれたユングの自伝にでてくる老子のことばの和訳を,加島さんの著書『タオ 老子』の中から引用させていただいたことにさかのぼる。この時から加島さんとは手紙を通してユングをめぐるやりとりが長い間続いている。
 近年では,信州の伊那谷に毎年おじゃまして,創作の現場を拝見する機会も増えてきた。加島さんが一連の自由律による老子の翻訳の後に取り組んでいるのは,白楽天などの漢詩や,老荘思想にふれることによって新たにでてきた「求めない」という生き方である。この「求めない」については,加島さんの同名の詩集が現代詩では異例のベストセラーになり,カレンダーにもなっている。
 この「求めない」の次にでてきたテーマが,「受け入れる」というテーマである。これはただ「受け取る」のではなく,自分に課せられたすべての状況を「受け入れる」ことであることは,昨年加島さんのアトリエである「晩晴館」で行われたトークショーの時にすでにその萌芽を見せていたテーマである。近年の作品は,それを意識した表現も見られるようになってきた。
 個展のタイトルに出てくる“バリ”とは,加島さんが毎年訪れているバリ島のことである。近年はバリ島滞在中に制作された作品も多い。伊那谷とバリとでは,地形も気候もまったく異なるが,世の中の喧騒や「時間」に制約を受けることはないという点では共通しているのであろう。会いたい人とだけ会って,やりたい仕事だけをやり,あとは好きな時間に作品を制作するということは,東京に暮していては不可能に近い。伊那谷やバリに暮していればこれが可能なのかもしれないが,反対に,今度は会いたいときに人に会えないという孤独がつきまとうのである。
 かつて大学教授時代は都心に暮して都会的な生活をしてきた加島さんが,伊那谷に一人で暮すようになって,あの人間の存在を拒絶するような冬の駒ヶ根連峰の風景を見ながら描いた初期の作品は,まさに人間の割り込む余地がないような厳しいものだが,加島さんがそれから何度も伊那谷で四季を過ごすようになってからは,夕菅やチョウといった足もとにいる小さな生き物たちにも目がいくようになり,その作品の変化を知るだけでも興味深い。

 今回の個展会場となっている場所は,銀座7丁目のガード下のコリドー街にあるBar Kajimaである。Barの名前でわかるように,加島さんの御子息が経営している画壇バーだ。かつての新宿ゴールデン街とまではいかないが,コリドー街には今でも絵描き,詩人などがたくさん集まるバーがいくつか存在する。中央通りは海外の有名ブランドショップが並ぶようになって,昔の銀座を知る人はこの変容ぶりに驚くであろうが,コリドー街だけは,古き良き銀座の風合いを残したままである。
 Bar Kajimaは,細長いカウンター席の向こうにわずかながらのギャラリースペースがあり,カウンター席とは対照的にやや明るめの照明が施されている。ここで毎月いろいろな画家たちが作品を並べているのである。外へ出なければパリの雰囲気である。たまたまその日に隣り合った見知らぬ客とも遠慮なく芸術談義ができるのがこのような空間の楽しいところなのだ。
 本来ならば,銀座の中央通りこそ,こういった店が軒を連ねるほうが,町の景色としては味わいがあるのだが,近年はこういったBarだけではなく,画廊そのものが数が減ってきているのである。その中には,もっと金や人が集まりそうな場所へ移転したものもあるが,多くは事実上閉鎖に近い形で空間を閉め,作家の仲介や画商として事務所業務だけをしているところもある。このような状況を考えると,銀座で場所を一旦閉じた後,同じく銀座で再び画廊をリニューアル・オープンさせた藍画廊は,極めて異例なケースである。

 Bar Kajimaは,行くたびにいろいろな画家の作品が見られるだけではなく,ここの店で出てくる酒や料理も一級品である。特に,サワー種で焼かれたレア風味の黒パンは,他の店では食べたことがない。この直径3ミリほどにスライスされた湿り気のある黒パンに合うのが,カマンベールチーズと辛めのワインである。料理では,香ばしいラム肉と季節の野菜サラダがお勧め。
 このようなジビエ料理を口にしながら芸術談義ができる数少ないBarである。

加島祥造展 「伊那谷からバリへ」
2009年6月8日(月)~27日(土)
場所: 銀座コリドー街 Bar Kajima
    中央区銀座7-2-20 山城ビル2階
    電話 03-3574-8720
時間: 月曜~金曜(18:00~24:00)
    日曜日(15:00~21:00)

加島祥造トークショー
2009年6月20日(土)
場所: 文化クイントサロン
    渋谷区代々木3-22-7 新宿文化クイントビル2階
時間: 15:00~16:00
料金: 1500円
【申し込み】先着100名
はがきに「加島祥造お話の会参加希望」と明記し,住所,氏名,電話番号を書いて『銀花』編集部までお送り下さい。
『銀花』 編集部
渋谷区代々木3-22-7 文化出版局 季刊 『銀花』 編集部まで

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