« 【訃報】 忌野清志郎氏(58)癌のため逝去~独語辞典にサインをしてもらった思い出~ | Start | 【名古屋芸術大学・芸術療法講座】 2008年度学生のフィールドワークを読む~医療空間における風景画の作用~ »

07. Mai 09

【CS放送】 ウルトラマンレオ(第40話) 『MAC全滅! 円盤は生物だった!』

Photo

 怪獣映画や特撮番組の中には,いわゆる「トラウマ怪獣」といわれるジャンルがあるようで,我が家でも怪獣好きの人間が集まって映画上映会などをやる時には,なぜかカッコ良い怪獣談義よりもトラウマ怪獣談義で盛り上がるのだから不思議である。
 GW中にママゴンやパパザウルスに外に遊びに連れて行ってもらえなかった可哀想なチビッコたちのためだろうか,CS放送各局ではアニメや特撮番組のシリーズを一挙放送というのをやっていた。こういう企画自体は,昔,スーパーチャンネルで定期的に企画していた「スタートレックまるごと24時間」がもっとも馴染みがある。
 今回私が録画しながら視聴していたのはCS放送ファミリー劇場で放送していた『ウルトラマンレオ』一挙放送である。この作品は円谷プロの70年代のウルトラシリーズの後期を飾る作品である。主演は,現在民俗楽器や日本の伝統的な和楽器とコラボレーションした「語り」のライブを行っている「真夏座」の真夏竜氏。彼が「おおとりげん」という人間体で登場し,ウルトラマンレオに変身して怪獣や宇宙人と戦うのである。
 『ウルトラマンレオ』という作品を,けして子ども番組などとバカにしてはいけない。70年代の毒気満載のこの作品を何の気なしに気軽に見ていると,とんでもないものを見せられるから要注意である。

 この作品は全話を通して,第一シリーズと第二シリーズに大きく分けることができる。第一シリーズでは,その他のウルトラシリーズと同様に,防衛隊とウルトラマンが怪獣や宇宙人と戦うシリーズである。もしこれだけならば,数多あるウルトラシリーズの中でここまでもインパクトのある作品にはならなかったであろう。
 問題は第二シリーズである。ここに始めて登場する「円盤生物」なるものが最終話まで異彩を放っているのである。この「円盤生物」なるものは,レオよりも前作の『ウルトラマンA』に登場した「超獣」よりもインパクトがあるかもしれない。
 地球侵略を企むブラックスターのブラック指令が母星ブラックスターから毎回地球に召還する円盤状の宇宙生物が円盤生物である。それはクラゲ状のものから甲殻類や昆虫風のものまでいろいろいる。
 円盤生物第1号として地球に召還されたのが,トラウマ怪獣としても人気が高いシルバーブルーメという円盤生物である。なんとこのシルバーブルーメは,防衛隊隊員が誕生日パーティーをやっている基地に急襲をかけ,基地ごと体内に丸呑みして,隊員と防衛隊基地は全滅する。そして地球に降り立ったシルバーブルーメは,防衛隊隊員と地元住民の交流の場であったスポーツクラブの建物も破壊し,主人公のおおとりげんと親しい人間たちも,ほぼ全員被災して死亡する。
 ここまでがあっという間の出来事である。子ども番組でありながら,災害では女性や子どもといった弱いものが呆気なく死んでいくことをリアリズムを持って描いているところが容赦ない。

 円盤生物の奇襲を受けた後の物語は,画面全体にも隠遁とした暗さが漂っている。電気,ガス,水道といったライフラインはかろうじて確保され,交通機関や医療機関,報道機関も最低限は機能しているが,怪獣や宇宙人と戦うために特殊兵装をした防衛隊は全滅し,市民の治安は警察と自衛隊に準ずるものが守っているという脆弱な状態である。しかも,円盤生物の来襲で両親を失った孤児もたくさんいて,そういった孤児たちは,よその家庭や親戚の家に身を寄せている。人々もどことなく殺伐としていて,この状況を例えるならば,まさに戦時下の日本そのものである。
 中でも市民たちにとって大きなダメージとなったのは防衛隊の全滅だけではなく,日頃何かと防衛隊隊員と地元住民の交流の場であったスポーツクラブの壊滅であろう。これによって市民は信頼によって結ばれていた地域コミュニティを失ったのである。その結果,互いが疑心暗鬼になり,防衛隊の援護もなく一人で円盤生物と戦っているウルトラマンレオに対しても怒りや憎しみの矛先を向けたりする。
 これはスイス政府が市民のために提言して各国でベストセラーになった『民間防衛』で挙げられている他国の侵略者による様々な工作行程の手法とまさに符合する。『民間防衛』では,ただ単に武力で侵略するだけではなく,思想侵略,文化侵略,人口侵略などについても詳しく言及されているが,これは現在,国体が揺らぎかけている日本が置かれている状況ともおおいに共通する部分がある。それをやってのけるブラック指令はなかなかのものだ。
 しかもこのブラック指令は,様々な禁じ手を使うのである。その中でも,ここまでやるかと思ったのは,工作活動で孤児たちを取り込んで,この孤児の子どもを使って一般市民を襲わせるのである。これは見ていていたたまれないものがある。まるで自爆テロのために訓練された中東の少年兵のようだ。幼気な子どもが市民を毒ガスで襲うのである。バルタン星人だってここまではやらなかった。番組は異なるが,『マグマ大使』に登場した宇宙の侵略者ゴアだって,宇宙細菌をばらまく怪獣で地球を襲ったりしたが,子どもには手を出さなかった。ブラック指令はまさにビン・ラディンのような存在である。

 円盤生物の造形も,不可解極まりない。あの不可解さとテクノロジーを現代の映像技術で表現すると,例えば『バトルスター・ギャラクティカ』に登場するサイロンの有機細胞でできた戦闘機のようなものになるのだろう。いずれにしても,宇宙生物というからには,地球上のいかなる生物にも造形的な由来を受けない物体であるのが好ましい。人知の想像を超えたところに宇宙生物の醍醐味がある。その点を考えると,ウルトラシリーズにはこれまで多くの宇宙生物や宇宙人が登場したが,地球の重力に影響されないであろう形態をした円盤生物は,まさに宇宙生物というのに相応しい。しかも時に知性的でありながら,停戦合意や講和について話し合えるような相手でもないところが最悪なのである。
 この円盤生物シリーズで唯一の救いは,最後は子どもたちが協力してブラック指令を倒すことである。これは,防衛から治安まで,今まで何でもウルトラマンに頼ってきた市民のウルトラマンからの自立や,親からの独立を意味しているのであろう。今見ても,非常にコンテンポラリーなテーマが埋め込まれた作品である。

|

« 【訃報】 忌野清志郎氏(58)癌のため逝去~独語辞典にサインをしてもらった思い出~ | Start | 【名古屋芸術大学・芸術療法講座】 2008年度学生のフィールドワークを読む~医療空間における風景画の作用~ »

特撮・アニメ」カテゴリの記事

Kommentare

Kommentar schreiben



(Wird nicht angezeigt.)




TrackBack


Folgende Weblogs beziehen sich auf 【CS放送】 ウルトラマンレオ(第40話) 『MAC全滅! 円盤は生物だった!』:

« 【訃報】 忌野清志郎氏(58)癌のため逝去~独語辞典にサインをしてもらった思い出~ | Start | 【名古屋芸術大学・芸術療法講座】 2008年度学生のフィールドワークを読む~医療空間における風景画の作用~ »