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25. April 09

【名古屋芸術大学・芸術療法講座】 2008年度学生のフィールドワークを振り返る

 現在,今年度(2009年)の名古屋芸術大学の集中講義の準備に向けて,昨年の学生の授業内のミニ・レポートや後期集中講義の最終レポートなどを振り返りながら毎日再読しているところである。
 私が受け持つ講座は「芸術療法」で,毎回シラバスの冒頭には次のような文言を必ず入れている。

【名古屋芸術大学芸術療法講座──美術史から考察する疾病論・医学概論】
“人はなぜ病むのか?”、“「病」はどこから我々のもとにやってきたのか?”──。
「病」の歴史とアートを通してこんな問いかけを行っていくのが本講座である。
本講座ではまず、多数の図版資料、文献をもとに西洋美術史と西洋医学史を古代ギリシャ時代から同時に学びながら、「芸術」と「医学」の関わり、「表現」という行為と「治療的行為」の相違点を明確にしていく。
さらに、図像学の視点でそれぞれの時代の「病」像を抽出し、芸術というものが、人類史の中でいかに「病」と実践的に関わってきたのかを考察し、今日の芸術療法の現場が抱える問題点を踏まえたうえで、「表現」と「治療的行為」の接点の可能性について再度模索していく。(2009年度シラバスより)

 これをみても分かるとおり,私の講義は,医学と芸術を大きく横断するような内容となっている。具体的には,美学,西洋美術史,医学史,医学概論,医療人類学を骨子とした内容である。これを芸術学部の学生たちに学ばせている。
 また,私の講義はインターシップ方式を採用しているので,学外の学生や社会人が聴講生や履修生として講義を聞くことも可能である。私の講義で得た「単位」は,在学している大学の「単位」にも加算される。因みに昨年は,社会人履修生の参加があった。これからも特に医学部の学生らには門戸を広げておきたい。
 昨年度(2008年度)の最終レポートは,「医療空間におけるアートの役割」と題したフィールドワークであった。
 ちなみに一昨年(2007年度)は,絵画・映画などの視覚表現の中から表現病理を考察していく「疾病論」であった。こちらの方は,毎回講義を聞いていればレポート・テーマのヒントになる題材は比較的探しやすく,学生の方も取り組みやすかったことと思う。そこで,前年度「芸術療法講座」を受講した学生のレポートのクオリティから判断して,昨年度(2008年度)は,さらに踏み込んだ内容で,フィールドワークの課題を設定した。
 具体的には,学生それぞれが個人でいろいろな医療機関を訪ね歩き,そこで見つけた芸術作品や,医療機関が患者のために試みているアート・プログラムなどをレポートするというものである。
 私の「芸術療法講座」の講義は,いわゆる初めから“癒し”を前提としてアートの有用性を考察するものでもなければ,実技としてアート・セラピーを施すものでもない。実際に創作の現場に関わっている芸術学部の学生らにとっては,それらがいかに制度の中で形骸化されてきたものであるかが分かっているからである。
 そのような理由も含めて,私の講義では,西洋医学史と西洋美術史を古代ギリシャ時代から同時進行で学び,その双方,つまり「医学」(西洋美術史)と「芸術」(西洋美術史)の間にはどんな接点があったのか,また,人類は長い歴史の中で「病」というものをどのように捉え,そして「癒し」というものをどのように実践してきたのかを毎回考察している。そして最終的には,現代の医療空間と芸術表現の間に,何らかの接点の可能性を示唆できるのであれば,それを試みていこうとするものである。したがって,最初から前提として<「芸術」=「癒し」>と定義するものではない。
 これは,現在世の中にある流行のように氾濫する“癒しブーム”や,昨今の芸術表現がいとも安易に医療の領域に結びつこうとする危うい情況に対して,批評的態度を表したものでもある。
 昨年度の最終レポートは,まさにそれの集大成である。
 学生らの目から見て,彼らが独自のフィールドワークで見つけてきた様々な芸術作品が,医療空間の中でどのような存在に映ったのか。あるいは,芸術作品があえて医療空間に存在することで,芸術以上の意義が存在するのか否かをあらためて考察するこのレポートは,ややハードルの高い内容にも思えたが,学生が仕上げたこのレポートの内容を見るかぎり,なかなか意欲的に取り組んでいる学生も多くいるので,このフィールドワークは正解だったといえる。
 その中から,今日の芸術療法が抱えるざまざまな情況に対する問題提起となり得るものを,これから時間が許す限り順次触れていくこととする。

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