« 【公開セッション】生命という策略(2009・1・25 四谷アート・ステュディウム) | Start | 【座談会】1月9日 「若者で考える新JICA」(メコンウォッチ・インターン企画) »

04. Januar 09

【映画】林家しん平監督 『深海獣雷牙』 撮影快調!

 昨年の暮れに林家しん平監督から,レイゴー第2弾『深海獣雷牙』の制作の様子をお知らせいただいた。もともと,末広亭で開かれる制作発表記者会見に顔を出すつもりでいたのだが,所用のために行けず,制作の進行状況のことも気になっていたが,まずまず快調のようである。
 レイゴーの2作目のお話を具体的に聞いたのは,昨年の8月に新文芸坐で,金子修介監督,雨宮慶太監督,俳優の螢雪次朗さんを迎えてのトークショーの本番の時である。この日上映された前作『深海獣レイゴー』の上映の終わった後,エンドロールにさりげなく流れる“レイゴー2”という予告のような文字が気になってしまい,会場のお客さんもそのことを知りたがっていた様子なので,トークショーの本番でしん平監督に,“あのー,レイゴー2ってなんですか!?”と聞いてみたのだ。そうしたら,しん平監督の口から,“実はレイゴーの2作目を作ることが今日正式に決まりました!”と予想もしない答えが返ってきて,会場のお客さんからも驚きと歓声が上がったのであった。
 監督が,“今日正式に”と言ったのは,前作に引き続き雷牙でも,雨宮監督がモンスターデザインを手がけることが決まったからだと事情を説明していただいた。
 あれからおおよそ半年を経て,レイゴー第2弾の『雷牙』の全貌が,少しずつではあるが,明らかになってきた。昨年の24日午前0時に合わせてリニューアルされた公式webでは,雷牙が浅草の町を暴れまくる様子が少しだけだが見ることができる。

 前作『深海獣レイゴー』は,設定は太平洋戦争時代の南方の島で,そこで戦艦大和以下連合艦隊と,深海に棲む大怪獣レイゴーが死闘を繰り広げるという斬新な作品であった。この作品の面白いところの一つは,メーサー砲が存在しない世界で人類が近代火器だけで大怪獣と戦うというところである。
 昨今,ミレニアム・ゴジラ以降,どうも怪獣が巨大になり,しかも強くなりすぎたおかげで,それを迎え撃つ我が国自衛隊の装備も世界一最強で,もはやインフレ状態である。まるで恐ろしい耐性を持ったブドウ球菌と抗生物質の終わり無き戦いを見ているようでもある。そのうえ「日米安保」や「憲法9条」など絵に描いた餅状態だ。日頃“戦争はんたーい!”,“自衛隊は憲法違反!”などと叫んでいる「プロ市民」の方々も,怪獣に踏み潰されるのだからそれどころではない。

 もちろん怪獣映画の醍醐味の一つは,大怪獣が暴れまわることである。ビルや話題のスポットが次々と破壊されることに我々はカタルシスを得ることができる。
 古代ギリシャの医聖ヒポクラテスの言うとおり,適度なカタルシスによって,我々人間は心身に滞留した“淀み”を体外に排出できるのである。例えば,古代ギリシャ医学から臨床医療として存在していた「瀉血」,「瀉下」という行為は,身体的カタルシスを表したものである。
 しかし一方で,近代火器しか持たない人類が英知を結集して,苦難の末に最後には大怪獣を倒すというのもそれなりの達成感がある。これは建物の破壊などで断続的に感じるカタルシスよりも,むしろ男性の身体に起こる射精の瞬間に感覚が近いかもい知れない。前作『深海獣レイゴー』では,ラストに火を噴く大和の「94式三連装46サンチ砲」の咆哮が,まさにそれである。
 レイゴーの第2弾と銘打っている『深海獣雷牙』では,深海の大怪獣であったレイゴーが陸棲の大怪獣に進化をとげて,今度は浅草の町で大暴れするというものである。『レイゴー』で近代火器VS大怪獣という近年稀に見る興味深いコンテクストで怪獣映画を撮ったしん平監督は,今度はどんな面白い「仕掛け」を作るのかが非常に楽しみである。
 ここで全部はまだ書けないが,公開情報だけを少し紹介すると,今回登場する雷牙なる大怪獣は,60年前に大和と戦ったレイゴー(零号)が陸棲大怪獣に進化したものである。同一個体か否かはいまだ不明。巨大化した身体の側面にはエネルギー・コアが昆虫の気門のように並び,そこを熱伝導元にして口から何らかの破壊光線を吐きそうなことだけは容易に想像できる。
 今回はこの雷牙が浅草の町で暴れまわるのである。しかしこの強そうな大怪獣を迎え撃つのは自衛隊ではなく,しん平監督の話によると,浅草防衛団(仮称)なるものらしい。一般商業映画のように大きな予算がつけば自衛隊の大部隊を展開したいところだが,それもできないので苦肉の策で生まれたのが浅草防衛団だそうである。しかし私はかえってこの浅草防衛団という存在自体がこの映画を面白くしそうな感じがする。なぜならそれは,“防衛団”という,どことなく町内の自警団や消防団を彷彿とさせるような小さな自治組織が浅草の町のスケールに似合っているからである。
 今までの怪獣映画では,我々は副都心のインテリジェンスビルからモニターごしの遠景として怪獣を眺めてきた。しかし『雷牙』の世界観では,風呂屋の2階や床屋の窓から怪獣の姿が見えるような距離感がある。そして祭が大好きな浅草の人々が,火事と花火と怪獣で賑わう中,狭い木造家屋の路地を縫うようにして逃げまどうのである。町中は文字通り“お祭り騒ぎ”になり,てんやわんやの状況が目に浮かぶ。この状況は,まるで神社に祭ってある祟り神が実際に姿を現して,なんとかその“神サマ”を鎮めようと奔走する江戸の人々のようだ。
 しん平監督は,怪獣映画における隙間の様な空間を見つけるのが実にうまい。前回は太平洋戦争時代の南方の島での連合艦隊の停泊期間。そして今回は,巨大インテリジェンス都市ではなく浅草の町内である。このような空間は怪獣空白地帯なのである。
 それから今回は,生命科学の分野でもいろいろとアプローチできそうだ。その一つがDNAは「感情」や「記憶」もアーカイヴできるのか? という問いである。これは現代アートの分野でも様々なアーティストたちが作品のテーマとしているものであり,例えばパフォーマーの浜田剛爾は,蜂蜜や自分の血液を他の生物に移植するパフォーマンスで,自分のDNA情報に書かれたものが生体情報だけではなく「記憶」「感情」も移動するのではないか,という問いを行った。
 映画では,大森一樹監督の『ゴジラ対キングギドラ』で,戦時中に南方の島原産の爬虫類だったゴジラが,戦後に繁栄をとげた日本によみがえり,大財閥の帝洋グループの会長となった日本兵の生き残りと高層ビルの窓ごしに再開し,ゴジラが米帝に対し共に戦った時の記憶を一瞬だが思い出すような演出がなされている。
 しん平監督とはこの点についてはもう何度も話しているのだが,欧米のいわゆる怪獣映画といわれるものが,醜い異形が暴れまわる「化け物映画」であるのに対して,日本の怪獣映画は怪獣自身が「怨念」,「執念」,「業」を背負ったものである。これをしん平監督は私と同様に「もののあわれ」と言っている。だから怪獣にも感情移入できるのだとしたら,雷牙がレイゴーの時の記憶を持っていた場合,浅草の人たちも,人間側にも背負わされたその大きな「業」に深く苦しむことになろう。果たして人間は,この大怪獣を倒して良いのだろうか,という問いかけのようなものも,この作品には生まれてくるかもしれない。
(林家しん平監督『深海獣雷牙』 2009年夏公開予定)

※怪獣から浅草を守る防衛団は「台東防衛隊」という名称に決まったようである。

『深海獣雷牙』公式web
http://d-raiga.jp/
『深海獣雷牙』公式ブログ
http://blog.d-raiga.jp/

『深海獣レイゴー』関連レビュー記事一覧
http://ringer.cocolog-nifty.com/kunst_und_medizin/2008/06/2008_9e74.html
http://ringer.cocolog-nifty.com/kunst_und_medizin/2008/03/post_0386.html
http://ringer.cocolog-nifty.com/kunst_und_medizin/2008/08/in_379f.html

|

« 【公開セッション】生命という策略(2009・1・25 四谷アート・ステュディウム) | Start | 【座談会】1月9日 「若者で考える新JICA」(メコンウォッチ・インターン企画) »

映画・ドキュメンタリー」カテゴリの記事

Kommentare

Kommentar schreiben



(Wird nicht angezeigt.)




TrackBack


Folgende Weblogs beziehen sich auf 【映画】林家しん平監督 『深海獣雷牙』 撮影快調!:

» ガメラ:深海獣雷牙関連情報 2009/01/09 [ガメラ医師のBlog]
 本日四本目の更新です。 一本目「金子版視聴記 /01/09」はこちら。 二本目「高知県の大心劇場について 09/01」には、こちらから。 三本目「ガメラな風景 09/01」にはこちらより。  本項では、「駕瞑羅4(ガメラ4) 真実」を製作・監督された落語家、林家しん平師匠が現在製作中の新作怪獣映画、「深海獣雷牙」についての関連情報をまとめてご紹介しております。 前回の「 08/12/27」はこちらからとなります。  動画系: 『餅田社宅』 http://pub.ne.jp/syamagam/... [mehr]

verlinkt am: 09. Januar 09 17:39 Uhr

« 【公開セッション】生命という策略(2009・1・25 四谷アート・ステュディウム) | Start | 【座談会】1月9日 「若者で考える新JICA」(メコンウォッチ・インターン企画) »