« Februar 2008 | Start | April 2008 »

März 2008

20. März 08

【映画】林家しん平監督『深海獣レイゴー』遂に公開決定

 長い間待たされた、林家しん平監督の『深海獣レイゴー』の公開がついに決まった。
 この作品の公開の話題が持ち上がったのは、そもそも今から2年ほども前の話である。「戦艦大和」とゴジラ級の大怪獣が南方の海で死闘を繰り広げるという、特撮ファンならずともわくわくするような内容に、カルト系映画マニアの間でも相当の話題になっていた。
 当時のブログを閲覧すると、当初林家監督は、2005年冬の公開にこだわっていたのがよくわかる。その理由は、この時期公開されて大ヒットした東映映画『男たちの大和』にぶつけたかったからだ。『男たちの大和』は製作費50億以上の大作で、しかも尾道に仮設した実寸大の「戦艦大和」のセットが度肝を抜き、また、呉に「大和」の博物館ができるなど、この年は何かと「大和」の話題がつきなかった。そのような流れの中で、同じ時期に、方や製作費50億の一大スペクタクル、そして方や職人的手作り感のある自主制作映画が、双方われわれ日本人にとってもっとも象徴的存在である「戦艦大和」をテーマにした作品として同時期に公開されたとしたら、それはそれで面白いと思った。
 この2つの作品は、当たり前だが製作費は比べ物にならない。そもそもロードショー作品と自主制作映画をスケールで比較しても無意味だ。ならばこの2つの作品を並べた時に比較されるべきものは、言うまでもなく、「大和」へのこだわり一点だけである。その点、『男たちの大和』は、史実をモティーフにしているわけだから、実寸大「大和」の荘厳な量感・質感を堪能できるかわりに、米帝にボコられる悲劇的な「大和」の姿ももれなくおまけに付いてくる。しかも、その後何100年もたってから未来の地球人にサルベージされ、おまけに波動エンジンを実装されて宇宙へ旅立つ、などということももちろんない。「大和」の悲惨なこの結末を知りつつも『男たちの大和』を見るという行為は、ある意味、「大和」や「大和」の乗組員への鎮魂の意を捧げる行為でもあるのだ。それに対し『レイゴー』の方は、「大和」に関する史実的設定はなされるものの、ストーリー自体は監督の創作であるから、どんな「大和」が登場して、どのように大怪獣と闘うのか、という楽しみが広がる。(荒巻義雄の架空戦記に出てくるような無敵の大和が登場するのか?)
 
 そんな待ちに待たされた『深海獣レイゴー』が公開される。作品を見る前からあまりいろいろと言えないが、俳優陣も味があり、クリエイターも秀逸な面々が集まっているので怪獣造形もある程度期待できる。ストーリーにしても、「戦艦大和」が南方の海で大怪獣と闘うという奇想天外なもので実に楽しい。だとすると、この作品の賛否が分かれるポイントは、「大和」の象徴である94式三連装46サンチ砲が豪快にカッコよく咆哮をあげるか否かの一点にある。これこそが、この作品の最終防衛ラインだ。

林家しん平監督『深海獣レイゴー』
6月12日(木)より公開(場所・北沢タウンホール)

| | Kommentare (4) | TrackBack (0)

02. März 08

金子雅和監督×井上リサ トークショー(渋谷UPLINK X)

 先日、渋谷のUPLINK Xで行った金子雅和監督のトークショーの模様を少し報告したいと思う。
 現在UPLINK Xでは、先週も当ブログでレビューとして紹介した金子監督の『すみれ人形』がレイトショーで好評上映中である(3月7日まで)。上映と併せて連日各界から多彩なゲストを招いての金子監督のとのトークショーも好評のようで、『すみれ人形』という作品を様々な可能性から多面的に捉えていくというこの試みは、次の作品を制作する時のイメージの発露となるであろう。

 今回は私は29日(金)の回に、ゲストとしてトークショーに招かれて、そこで「身体と心」というテーマで少し話させていただいた。
 私はこのトークショーがきっかけで、かなり突っ込んで、映画製作に対する金子監督の姿勢、そしてテーマなどについて話すことで、はっきりとわかったことがある。それは金子監督独特の映画方法論であり、前回(2002年)に拝見した8mmフィルムの作品『那美の瀬』とも大いに関連する。
 私はかねてから、金子監督の作品を見た後に、なおも強く印象に残っている自然の風景が、月日が経ても色あせずに残っているということが不思議でたまらなかった。例えば、『那美の瀬』に登場する郊外を流れる二級河川、ダム河口付近の道幅が極端に狭くなった林道、ほの暗い源流といった風景なのだが、これらの風景は、単に登場人物の心理の中にアーカイブされた、いわば“通り過ぎていく”忘却の景色ではなく、それとは反対に、登場人物の身体が、その五感をもって肉体的に記憶している風景なのである。
 私がここの部分を話に振ってみたところ、監督からは実に興味深い答が返ってきた。監督いわく、自分がシナリオの段階から映画を作りこんでいく過程で、シナリオのセオリーである登場人物の「心理」から描いていくのではなく、あくまでも出発点は「身体」にあるのだそうだ。そしてその「身体」そのものを、監督が自ら作品の恒久的テーマとしている「人間感情の発生の起源」の発露とし、「身体、肉体」→「精神」というベクトルで描いていくということだそうだ。
 『すみれ人形』には、随所に猟奇的な場面が多く挿入されているが、それが単に多くのサイコホラーと異なる点はここなのである。サイコホラーの場合、精神心理学、分析学、精神医学などの知識があれば、その展開が、例えばフロイトなどの既存のアーカイブのバリエーションであることに容易に気づくことができ、その物語で登場する風景や身体も、その展開を説明するツールでしかないことが理解できる。すなわちサイコホラーの場合、その秀逸にして職人技とも思えるバリエーションを楽しむことに価値を見出すことができるのである。だから映画に限らず昨今のホラーゲームなどは、それに特化したものが人気を得ているのは納得できるのである。
 では金子監督の作品はどうかというと、「人間感情の発生の起源」を身体に求めるというテーマのとおり、登場人物の猟奇的な行為は精神心理学的な「病」として帰結するのではなく、人間の身体が原初的に持っている感覚や機能、たとえば欠損組織の再生機能、自己治癒機能などが暴走した結果、猟奇的な事態が発生するということだ。金子監督がしばしばインスパイアされたという塚本晋也監督の作品や、舞踏家・土方巽の作品(特に、石井輝男監督による『恐怖奇形人間』)なども、たしかに共通するものがある。また、たとえば癌細胞の発生・増殖、そして増大に見られる血管新生という現象も、言うなれば大いに猟奇的な事態であり、ここには人間の意思という、いわば「精神」をコアにした秩序もないままに暴走していく身体の姿が存在する。

 次に、『すみれ人形』の登場人物たちについて話が及んだが、ここに登場する主要人物たちは、何らかの事情で、身体の一部を欠損しているのだ。まず主人公の文月はもともと腎疾患であり、妹・すみれから腎臓をドネーションされることで身体の欠損を補填した。当然のことながら、妹・すみれはそれによって片方の腎臓を失い、さらに猟奇殺人の被害者となり、右腕までも欠損する。見世物小屋のストリッパーも右腕が欠損しており、その治療のために義手を制作している螢介のもとへと通っている。この人間関係の中で共通して希求されるのが、失われた身体再生の物語である。しかし、この身体再生の物語には従来のヒューマニズムは存在するはずもなく、それぞれが肉体の赴くままに、猟奇的行為を繰り返していくのだ。この点について監督は、“切り離された身体へのいとおしさ”という言葉で表現してくれた。かくして秩序のないヒューマニズムの中で希求される「身体再生」は、結果的に美しい破滅を成し遂げるのであるが、これは精神心理学的「病」による仕業ではないことが明確に理解できるのである。

 後日監督からいただいたメールの中で、次回作はさらに「生命の機能」と「精神」の関係に深く関わった作品を撮りたいとのメッセージがあって、当然のことながら、その中で重要なテーマとなってくるのが「切り離された肉体に対しての執着」だそうである。次回作へのモティベーションも高まっており、ブログ読者の皆さんにも、随時トレーラー情報などをお伝えしたいと思う。

なお、上映最終日まで、連日イベントが盛りだくさんである。

3/2 日 本編上映後 山田キヌヲさん(女優)×綾野剛さん(俳優)×オガワシンジさん(キャスティングディレクター)によるトーク
3/3 月 ドラァグクイーン・ レイチェル・ダムールのステージを記録した短編ドキュメンタリー『La Nuit D'Amour』(16分)上映+ レイチェル・ダムールさんによるミニステージ 
3/4 火 古澤健監督×金子監督によるトーク 
3/5 水 竹久圏さん×山川冬樹さんミニライブ
(※この回のみ上映料金一律¥1,500となります) 前売り・他割引券をお持ちの方も受付にて+¥500お願いいたします。
3/6 木 柳下毅一郎さん(特殊翻訳家・映画評論家)×金子監督によるトーク
3/7 金 本編上映前 小谷建仁さん、山田キヌヲさん(予定)、松岡龍平さん、金子雅和監督による最終日舞台挨拶
     本編上映後 沢則行さん(人形劇作家)×金子監督によるミニトーク
詳しくは
http://www.sumireningyo.com/ (すみれ人形公式HP)
http://www.uplink.co.jp/x/log/002413.php (アップリンクHP)

| | Kommentare (0) | TrackBack (0)

« Februar 2008 | Start | April 2008 »