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23. Oktober 07

【名古屋芸術大学・芸術療法講座】学生のレポートを読む~画家の自画像について

 先週放送した「3年B組金八先生」は、私にとって実にタイムリーな内容であった。この回のエピソードは、今社会問題化しているバカ親、いわゆるモンスターペアレントの執拗な過干渉により、担任やクラスメイトとの人間関係がうまくいかなくなってしまった児童が主人公であった。彼の父親は地元の有力な政治家で、母親も、自分自身は何のスキルもステイタスもないのにもかかわらず夫の権威にただぶら下がり、そのことでしかIDを得ることができない自己顕示欲の強い主婦である。昔なら教育評論家の阿部進が、こういったバカ親のことを“ママゴン”と怪獣のように呼んだものだ。
 さて、バカ親の話はこのへんにして、物語の中核は、バカ親の圧政に苦しんでいる1人の児童が、ある美術教師との関わりの中で、次第に親からのプレッシャーから解放されて、強い精神を獲得していくというプロセスにある。
 その美術教師が用意したワークショップがクラス全員に自画像を描かせることである。そこでクラスの他の児童たちは鏡で自分の顔を興味深く凝視しながら、楽しそうに自画像を描くのだが、先ほどのバカ親の子だけはなかなか描くことができない。しまいには自分の姿を直視できなくなり泣き出してしまう。そして、自分の親に向かって、「本当の自分の姿はどうなのだ」と詰め寄るのだ。これが彼にとっての初めての「主張」であったと思われる。
 この美術教師のねらいとは、普段は一番よくわかっているはすの自分の姿を、改めて客観的に見つめてみる、ということだ。
 折しも、私も直近の名古屋芸大での「芸術療法講座」の講義の中で、自画像について取り上げたばかりなので、実にタイムリーである。

 私は「芸術療法講座」の第9回講義の中で、精神を病んだ画家の一例としてゴッホとムンクを取り上げた。
1889_2
ゴッホ「自画像」(1889)

1919
ムンク「スペイン風邪の後の自画像」(1919)

 そして、学生に対し、次のような設問を投げかけた。

【設問】
印象派の代表的な画家・ゴッホ、表現主義に影響を与えた画家・ムンクは、ともに精神を病みながら、その病んだ自分の姿をモティーフにして多くの作品を制作した。
画家にとって、病んだ自分の姿を自画像として描くという行為には、どんな意味があるのか考えて下さい。

 この設問に対してのレポートを、今あらためて読んでいる。その中で興味深いのは、「病気の自分を描くことで、自分の病の本質を客観的にとらえることができる」それにより、「病というものの偏見や恐怖を克服する」という解答や、「自分の病を描くことによって、自分が抱える病が外に放出されて楽になる」という解答もあった。この「病を放出する」ということについては、「自分の作品の中に病を転写する」、あるいは「作品の中に病を封じ込める」という具体的な方法論に言及したものもあった。
 実はこういった方法論は、実際にアート・セラピーや、癌などの難治性疾患の終末期医療の現場では、「イメージ療法」という形式で行われているものだ。特に後者の「病を外に放出する」という行為は、身体を使ったダンスセラピーや、熱中しながら造形作品を作らせる絵画療法と大いに共通する部分がある。
 私はこの設問を設定するにあたり、学生らに対しては、あえてアート・セラピーの現場でのこういった予備知識を与えなかった。それは、心理学における定型的な知識からではなく、芸大生なのだがら、日頃の作品制作をとおしてのアプローチから、クリエイターとしてこの問題を考えてもらいたかったのである。結果、偶然にも実践的なアート・セラピーと大いに共通する帰結点をみたわけだが、ここにこそ、医療におけるアートの役割の可能性を垣間見たきがしてならない。
 他にもこの回のレポートは、いろいろと読みどころ満載なので、後日また詳しく書きたいと思う。

 

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