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September 2007

22. September 07

名古屋芸術大学芸術療法講座2007度シラバス

2007年度芸術療法講座
「美術史から読み解く疾病論・医学概論」(要約)

Ach Gott! die Kunst ist lang!
Und kurz ist unser Leben.

(アートはいとも長く,人生は短い)
ゲーテが「ファウスト」で書いたセリフの一節である。
これは医学の父ヒポクラテスの有名な言葉「Ars longa, vita brevis」から引用された。
 ここに登場するdie KunstまたはArsは,Artのことであるが,この場合「芸術」という狭義の意味ではなく,「医術」も含めたあらゆる「術」のことをさしている。そしてそれを成すのは途方もなく困難なことも同時にあらわしている。

 元来、芸術と医学は、アルスメディカという言葉が示すとおり、「人間への眼差し」という臨床学的な座標上では、互いが深く反響し合う関係にあるといえる。
本講座では、西洋美術史と医学史のトピックを往来しながら、図像学の視点でそれぞれの時代の「病」像を抽出していく。また芸術というものが、人類史の中でいかに「病」と実践的に関わってきたかを再度考察し、今日の芸術療法の現場に対しても一定の批評力を高めることをも目的とする。

【授業計画と内容】
1)ガイダンス 美術図像学から疾病論、医学概論を読み解くことの意義、今日の芸術療法との関わりについて

2)古代ギリシャ・ローマ美術とヒポクラテス医学(1)
  ~「病」の起源~
医学というものが,まだ「科学」以前の存在であった時,人々は「病」とどう対峙してきたのかを考える。

3)古代ギリシャ・ローマ美術とヒポクラテス医学(2)
  ~「ホスピタル」の登場~
治癒空間としての「ホスピタル」がどのようにして形成されていったのかを,古代ギリシャ建築におけるポリス(都市国家思想)からさかのぼる。

4)ルネサンス絵画に描かれた医師像と患者像
西洋絵画の中で描かれた医師像,患者像を,絵画にとどまらず当時の風俗画・風刺画も交えて考察する。

5)キリスト教絵画における「病」と「手当て」の概念
  ~ナーシングの確立~
フラ・アンジェリコ,フィリッポリッピ,グリューネヴァルト,レオナルド・ダ・ヴィンチの作品を中心に,医療における自給自足的空間でもあった修道院看護の歴史から,近代看護の源流を探る。
たとえば「ユスティアヌスの治療」(フラ・アンジェリコ),「聖アントニウスの誘惑」(グリューネヴァルト)などの作品を通して,寓話の中で「病」がどのように描かれてきたのかを考える。またこれらの作品の舞台となっている修道院の中では,当時はどんな看護や医療が行われていたのかにも詳しくふれる。

6)戦争群像画におけるカタルシス
  ~回復装置として機能する解毒空間~
中・近世までの内科的治療の主流であった「瀉血」や「瀉下」について取り上げ,それがギリシャ哲学のカタルシス思想とどのように結びつくのかを考える。
また,現代におけるカタルシス的空間として両国国技館,有明コロシアム,阪神甲子園球場をとりあげ,その空間が祭祀空間としてどのように機能しているのかをギリシャ建築との共通点をあげながら考察する。

7)ラファエル前派に描かれた恍惚の女性像
  ~「卒倒」「昏睡」の美学と麻酔学の関わり
8)西洋カリカチュアの中の「生・老・病・死」
  ~「死の舞踏」をめぐる「病」観
9)後期印象派に投影された精神と身体の変容
10)表現主義で描かれた「狂気」と「快楽」
11)国家主義体制下の美術と「健康」「公衆衛生」観念
  ~国策として作られた「健康」の概念と計量生物学の台頭
12)モダニズムにおける新しい「死」と「病」の概念(1)
  ~心理学、近代精神医学との関わり
13)モダニズムにおける新しい「死」と「病」の概念(2)
  ~近代腫瘍学との関わり
14)映像表現におけるDing an sich<暗喩>としての「病」
15)総論、レポート提出課題についての概説

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