ラジオドラマ『Die geheimnisvolle Frau(謎の女)』-再び
NHKラジオ・ドイツ語講座『Die geheimnisvolle Frau(謎の女)』から相変わらず目が離せない。ヒトの脳神経細胞を活性化させ、コンピュータ並の演算能力と超人的な運動能力をもたらす新薬「ジェニーマハー」の開発に関わる薬学者カールが主人公の物語だ。現在のところ、この新薬開発を何かよからぬことに利用しようとする勢力と、新薬開発を妨害しようとする勢力がだんだんと顔を現しつつある。おまけに、やはりカールの命を狙っている者もいるようだ。まさに人間の欲望のるつぼの中にカールはいる。
ところで、この新薬開発をめぐる物語の中で、私はある2つのSF作品をすぐに思い浮かべた。ひとつは、SF文学賞でもっとも権威のあるとされるネビュラ賞を受賞したダニエル・キイスの名作『アルジャーノンに花束を』と、1970年代の日本の特撮作品『スペクトルマン』(ピー・プロ)の第48話「ボビーよ怪獣になるな!!」、第49話「悲しき天才怪獣ノーマン」である。
『アルジャーノンに花束を』は、わが国でもドラマ化・舞台化をされるなど、ファンが多い作品だ。知的障害の青年が動物実験を経て脳の改造手術を受けることで、高い知能を獲得するのだが、それによって青年が得たものと失ったもの、人間にとっての真の幸福とは何かを鮮烈に訴えかける作品である。一方、この作品の邦訳ともいえる『スペクトルマン』第48話「ボビーよ怪獣になるな!!」、第49話「悲しき天才怪獣ノーマン」も同様に、大脳生理学者から脳手術を受けて高い知能を得た青年が、次第に人間の姿ではなくなっていく様子を恐怖と悲哀にみちた表現で描き、青年は、自分の死と引き換えに自分の中にわずかながら残された人間としての良心によってのみ救われるというような、実際にはほとんど救いようのない最期を迎える。
このような物語で設定されるのは、人間が何を得る替わりに何を失うのか、という神との取り引きであり、多くの場合、失ったものの方の大きさに気づいたりする。
物語の中盤にさしかかってきた『Die geheimnisvolle Frau(謎の女)』も、主人公のカールが、その神との取り引きの中で、どのような選択をするのか興味深い。また彼の同僚で友達以上恋人未満といったところのリーザも、どんな行動をとるのだろうか。いずれにしてもシュミット博士にだけは気をつけろ。


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