2009年12月25日 (金)

リンガーの親族,アン・リンガーさんから来年のカレンダーとクリスマスカードが届く

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 クリスマスイブのこの日に,すばらしいタイミングでメルボルン在住の友人から来年のカレンダーとクリスマスカードが届く。送り主はアン・リンガーさん(Mrs. Anne Ringer)。名前を見てもわかるとおり,アンさんは,私が医学史領域で一貫して研究を続けているイギリスの生理学者シドニー・リンガー(Dr.Sydney Ringer, 1835-1910)の親族の方である。シドニー・リンガーは,わが国では輸液(点滴)のリンゲル液を発明した医学者としてよく知られるが,彼の医学的業績はこればかりではない。両生類の心筋を使った基礎研究をもとに,近代のカルディオロジーの基礎を作ったのもこのリンガーである。もしこの頃にノーベル賞が創設されていたならば,リンガーは間違いなくノーベル生理学賞を獲っていたであろう。

 アン・リンガーさんと私との出会いは,今から10年以上にさかのぼる。当時私は,医学史研究のため,しばしばイギリスと日本を往復する生活を始めた時,向こうの大学や研究機関に少し遅れるかたちでちょうど日本にもインターネットが普及し始めていた。その時に私が一番最初に開設したサイトが,作品のデータベース・サイトとリンガー研究を中心とした医学史研究サイトである。これは主に,海外の学者との研究交流,意見交換のために開設したもので,現在でもサイトを通して各国の研究者らと活発な交流がある。
 インターネットの特筆すべき点は,今さら言うまでもなく,その双方向性と集合知の構築である。自分がネット上に流したテキストは世界中の人たちが読んでいるわけである。このような状況の中で,ある日サイトを通して1通のメールが私のもとに届いた。
 「私はあなたが研究しているシドニー・リンガーの親族にあたるものです。あなたの研究に非常に興味を持ちました。日本でリンガーの研究をしている学者がいることにたいへん驚きました。」という内容のものだった。このメールを下さったのがアン・リンガーさんである。アンさんは,たまたまネットをサーフィンしていたら私のウェブページにたどりついたそうである。もしインターネットがなかったら,アンさんと出会うこともなかったかもしれない。私がネットというツールを基本的に肯定的に捉えているのは,ネット黎明期にこのようなダイナミズムを実体験したからだ。そして,そのころから,ネットというメディアはグローバルであるばかりではなく,マスメディアを含めたすべての領域をスーパーフラットな空間に作り変えていくであろうと予見していた。
 アンさんとのネットを通してのコンタクト以来,アンさん一家がたいへんな親日家であることから交流はさらに続き,アンさんからは,まだ医学史料としてアーカイヴされていないリンガー家の史料などを研究のためにご提供をいただいている。現在も,日本のある大手企業が進めている医学史関係の資料館開設のためにもいろいろとご協力をいただいているのである。

 そんなアンさんは,毎年この時期になると,クリスマスカードと一緒に必ずカレンダーを送ってきてくれるのである。アンさんから送られてくるカレンダーにはいろいろなメッセージがこめられている。ただ単に,新年を祝うというよりも,お互いにいろいろとあったこれまでの人生を鑑みながら,新しい年に向けての決意を表明するためのものでもあるのだ。私はアンさんのこのとても素敵な計らいに何度となく励まされてきた。失意のただ中にあった時に,ポストにアンさんからのカレンダーを見つけて救われた事もあったし,どのカレンダーも,アンさんと私の歩んできたこれまでの思い出が刻まれているのである。
 今年アンさんから送られてきたカレンダーは,オーストラリア政府のドクター・ヘリのカレンダーである。広大なオーストラリアの救命救急網をカバーするにはドクター・ヘリの活躍が必要不可欠だ。特に山火事などの自然災害が多い山岳地帯には,ドクター・ヘリでないと入っていけない場所もたくさんある。この点は,わが国の救命救急分野も見習うべき部分も多々あるのである。
 私の方からは,アンさんには「ジャパン・ナイトシーン」という,日本の観光地の夜景を集めたカレンダーを,そしてアンさんの長女で,現在大学で経済学を勉強中のアリソンには,山梨県の風景を集めたカレンダーをお送りした。アンさんにお送りした「ジャパン・ナイトシーン」の7月と8月のページは,熱海の海上花火大会の写真である。本当は全部熱海の観光カレンダーが欲しかったのだが見つからず,少しでも熱海の風景が載っているものと思い選んだのがこのカレンダーだ。現在,熱海で「農業・先端医療・アート」を連動させた熱海町づくりプロジェクトに関わっている私の苦肉の策である。
 アリソンに山梨のカレンダーを送ったのは,アリソンが山梨,特に甲府が大好きだからである。まず美しい富士が見えることと,アリソンがかつて交換留学で甲府に暮らしていたことがあって,その時にすっかり山梨を気に入ってしまったそうである。昨年は,不老園の梅園の写真と動画を送ったところ,とても喜んでいたので,今回の山梨のカレンダーも気にいってくれるにちがいない。
 
 

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